酒田市土門拳文化賞 第25回の結果報告

「酒田市土門拳文化賞」は、本市出身の世界的な写真家・土門拳の芸術文化への功績を記念し、写真文化、写真芸術の振興を目的に平成6年6月に創設した賞です。
25回目を迎えた今回は、全国35都道府県の137人から143テーマの作品が寄せられました。
令和元年6月28日(金)、酒田市において選考委員会を開催し、次のとおり受賞者が決定したので、お知らせいたします。

1.審査員

江成 常夫 氏   写真家・九州産業大学名誉教授
大西 みつぐ 氏  写真家
藤森 武 氏    写真家・公益財団法人 土門拳記念館学芸担当理事

2.選考結果

酒田市土門拳文化賞(1点)

上瀧由布子氏(千葉県松戸市)
「糸遊 ~ GOSSAMER」(モノクロ30枚組)

酒田市土門拳文化賞奨励賞(3点|受付番号順)

管野千代子氏(栃木県那須塩原市)
「二つの祖国」(カラー30枚組)
寺本雅彦氏(神奈川県横浜市旭区)
「墓場から揺り籠まで」(モノクロ30枚組)
新海裕幸氏(愛知県知多郡阿久比町)
「また一つ時を刻んで」(カラー30枚組)

管野千代子氏の作品より


寺本雅彦氏の作品より


新海裕幸氏の作品より



3.今後のスケジュール

授賞式   令和元年9月29日(日)午前10時〜  会場:土門拳記念館
受賞作品展 令和元年9月27日(金)~ 11月10日(日)   土門拳記念館
      令和元年11月26日(火)~ 12月2日(月)     ニコンプラザ新宿
      令和元年12月12日(木)~ 12月18日(水)   ニコンプラザ大阪

4.選考委員講評

◎ 総評江成 常夫
 戦前のカオスのなか、「写真リアリズム」を提唱し、日本の写真界に新風を吹き込んだ土門拳は、生涯を通し大きな足跡を残した。その偉業を称え創設された「土門拳文化賞」は今年四半世紀の節目を迎えた。
 「写真リアリズム」の礎は写真が普遍的価値とする記録性に他ならない。従ってこの賞に対する選考の評価基準は、表現として社会と時代に機能するうえで、写真が最も力とする、あるいは役割とする「記録性を基本とした新たな地平の開拓」と位置づけられてきている。
 この賞の理念ともいうべき価値づけが支持され、「プロへの登竜門」として、さらに写真文化育成の場として、広く認知されるに至っている。
 25回になる今年の応募作は、ほぼ例年並みの35都道府県から137人、143テーマが寄せられた。賞の性格が普及し、少子高齢化のもとでの命の課題、過密の一方で進む限界集落の実態、復興途上の東日本大震災、人手不足に関連した国際交流、発展途上国の人権に関するルポルタージュなど、進行する時代を鋭利に捉えた作品が目を引いた。そのなかでも高齢化にともなう命の尊厳に関わる、精神性の高い作が心に残った。道義が軽んじられ、利己や飽食が肥大化する社会にあって、単なる記録に止まらず記録と創造がせめぎ合う、人間本来のありようを問う作品をさらに期待したい。
 
◎ 土門拳文化賞受賞作品について藤森 武
「糸遊 ~ GOSSAMER」 上瀧 由布子 氏作品
 「写真は光と影が織りなす芸術」と言われる。上瀧さんの写真は光が当たって被写体に影を作ったものを写した写真とは違うように思う。
 陰の部分を大事にしている。陰の中にある、わずかな光が作り出すドラマを発見し、スポットライトが当たった被写体の陰そのものを主役に据えて写し出している。陰が演出した写真群といっていい。
 日常生活の普遍的な世界を捉えて、「生きている」ということはどういうことなのかを写真で見事に表現している。
 上瀧さん自身、決して孤独ではない。「頼りないほど柔らかい蜘蛛の糸が風に揺られているように不安定なだけなのだ」と言う。そのような心理状態を心象景色として写真表現したのである。
 すべての写真は一分の隙もなく、余分なものも写っていない。確固たる自分自身の写真美学が一枚一枚の写真から伝わってくる。
◎ 土門拳文化賞奨励賞受賞作品について大西 みつぐ
「二つの祖国」 管野 千代子 氏作品
 ルワンダ内戦によるコンゴ難民キャンプと福島の避難民仮設住宅を結ぶ糸。一人のルワンダの女性の献身的な活動と教育への思いが縦糸となり、また写真家自らが「世界」を理解していこうという誠実な態度を横糸とし、歳月を積み重ね写真記録として編み込まれた作品。25年前のジェノサイド、8年前の震災。悲しくも忌まわしい出来事だが、私たちは「人間の記憶」として心に留めたい。和やかな笑顔の写真を中心に据えたことにより、背景がしっかり際立った。
「墓場から揺り籠まで」 寺本 雅彦 氏作品
 作者は東南アジア諸国、インドなどを旅し、地べたをゆっくり歩き様々な経験を積んでいる。フィリピン・マニラ市内の墓地とそこで暮らす人々に焦点を当てた作品は、貧困、スラムという社会状況を照らし出す。光景への驚きや戸惑いだけでなく、眼差しの優しさが加わった時、世界への窓を着実に広げようという意欲をそこに感じさせるものがある。モノクロ表現に賭ける糸はまだか細いが、今後、より丁寧な取材を通して精進していただきたい。
「また一つ時を刻んで」 新海 裕幸 氏作品
 淡々と過ぎていく日々。事象、情動、思索などとともに写真機がいつも側にある。私的な時間と空間が普遍性をもたらすのは、私たちが「生」を全うしようという意思がそこに立ち表れているからだ。それぞれの写真が丁寧に撮られている。ここにも命の糸が綺麗に繋がっている。鏡に自身の顔を映す「バー様」の写真ではないが、写真そのものが自己を映し出す鏡として機能していることを改めてこれらの写真群によって示されているのではないか。

5.応募状況

年度 応募者数(男・女) テーマ数(モノクロ・カラー・混合) 作品枚数 都道府県
R1 25 137(104・33) 143(61・77・5) 3,885 35
H29 24 131(100・31) 146(80・60・6) 3,923 36
H28 23 131(111・20) 143(56・75・12) 3,879 36
H27 22 135(110・25) 143(52・83・8) 3,892 35
H26 21 117(98・19) 130(64・62・4) 3,446 33
H25 20 128(105・23) 140(50・78・12) 3,632 41
H24 19 147(121・26) 155(63・79・13) 3,981 36
H23 18 156(141・15) 161(53・102・4) 4,179 41
H22 17 144(127・17) 151(68・79・4) 3,867 37
H21 16 136(107・29) 154(53・93・8) 2,979 35
H20 15 127(112・15) 134(43・89・2) 2,902 36
H19 14 147(121・26) 155(56・94・5) 3,442 40
H18 13 101(81・20) 116(57・53・6) 2,861 30
H17 12 111(87・24) 117(66・48・3) 2,999 32
H16 11 124(95・29) 124(51・69・4) 2,848 36
H15 10 110(92・18) 120(56・61・3) 2,849 29
H14 9 103(84・19) 109(49・54・6) 2,808 30
H13 8 136(114・22) 142(68・68・6) 3,311 35
H12 7 115(97・18) 124(75・47・2) 3,006 38
H11 6 119(96・23) 127(67・58・2) 2,739 34
H10 5 139(108・31) 150(74・71・5) 3,134 36
H09 4 138(110・28) 151(82・67・2) 3,144 37
H08 3 151(124・27) 170(80・86・4) 2,835 34
H07 2 104( 93・11) 114(50・59・5) 1,938 34
H06 1 108(103・ 5) 130(62・66・2) 2,453 37

お問い合わせ・お申し込み先

〒998-0055 山形県酒田市飯森山2−13(飯森山公園内)
公益財団法人 土門拳記念館  文化賞事務局
電話/FAX:0234-31-0028

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