酒田市土門拳文化賞 第26回の結果報告
「酒田市土門拳文化賞」は、本市出身の世界的な写真家・土門拳の芸術文化への功績を記念し、写真文化、写真芸術の振興を目的に平成6年6月に創設された賞です。
26回目を迎えた今回は、全国37都道府県の138人から145テーマの作品が寄せられました。
令和2年10月16日(金)、酒田市において選考委員会を開催し、次のとおり受賞者が決定したので、お知らせいたします。
26回目を迎えた今回は、全国37都道府県の138人から145テーマの作品が寄せられました。
令和2年10月16日(金)、酒田市において選考委員会を開催し、次のとおり受賞者が決定したので、お知らせいたします。
1.審査員
江成 常夫 氏 写真家・九州産業大学名誉教授
大西 みつぐ 氏 写真家・前大阪芸術大学客員教授
藤森 武 氏 写真家・公益財団法人 土門拳記念館学芸担当理事
大西 みつぐ 氏 写真家・前大阪芸術大学客員教授
藤森 武 氏 写真家・公益財団法人 土門拳記念館学芸担当理事
2.選考結果
酒田市土門拳文化賞(1点)
海老名和雄氏(宮城県仙台市)
「恵みと試練」-丸森 2019-(カラー30枚組)
「恵みと試練」-丸森 2019-(カラー30枚組)

酒田市土門拳文化賞奨励賞(3点|受付番号順)
3.今後のスケジュール
授賞式 令和3年3月7日(日)午前10時〜 会場:土門拳記念館
受賞作品展 令和3年3月6日(土)~ 4月18日(日)予定 土門拳記念館
受賞作品展 令和3年3月6日(土)~ 4月18日(日)予定 土門拳記念館
4.選考委員講評
◎ 総評江成 常夫
写真、絵画、文学、いずれの表現分野であれ、その原点は歴史にある。そのうちでも写真は記録性を普遍的価値としていることから、社会や時代に直結していることは言うまでもない。土門拳が確立した写真リアリズムは記録性を礎としており、従って土門拳文化賞の理念は歴史観に通底していると言える。
この理念のもと、今年第26回を迎えた文化賞は当初、賞のかたちが整うまで紆余曲折したが、回を重ねるごとに明確になり、時代を踏まえたメッセージ性を持った作品が、多く寄せられるようになった。今回の応募者数はほぼ近年並みの138人。そのうち特記できるのは、初回の女性の応募者数が5人だったのに対し、今回は29人と6倍近くに増えている。男性と異なる固有の感性を持つ、女性の進出を喜びたい。
人間社会の無情に切り込むのが写真表現の本道である。新型コロナウイルスが世界を震撼させている時、写真の力をどう発揮させるか。目に見えないコロナ禍をどう視覚化するか、来年に期待したい。
◎ 土門拳文化賞受賞作品について藤森 武
「恵みと試練」ー丸森 2019- 海老名 和雄 氏作品
海老名さんは2019年4月から宮城県南部の丸森町にある養蚕農家2軒で繭作りを詳細に記録撮影してきた。その記録写真だけでも貴重な組写真となる。
海老名さんは2019年4月から宮城県南部の丸森町にある養蚕農家2軒で繭作りを詳細に記録撮影してきた。その記録写真だけでも貴重な組写真となる。
撮影のさなかの10月に大型台風19号が丸森を襲い大災害が発生した。海老名さんは養蚕農家が心配で被害の現実を撮影した。取材中の1軒は養蚕室が壊滅的な被害を受けたが、養蚕仲間が養蚕室の土砂の撤去を手伝ってくれ再開する気になったという。
丸森には養蚕農家が5軒あるというが、中山間地域の生活と限界集落に近い地域での問題点が浮き彫りとなったのである。
30枚の組写真の難しさを克服した見事な写真群である。
◎ 土門拳文化賞奨励賞受賞作品について大西 みつぐ
「沈黙の声」 藤吉 修忠 氏作品
沈黙の声とは、戦後75年を過ぎた今でも沖縄の「ガマ」の中から私たちに「鬼哭」として発し続けられるものだ。7年にも及ぶ作者の取材は、93年に観光で訪れた「ひめゆりの塔」での痛切な記憶に始まる。戦跡は人間の生きた痕跡として現在も克明に立ち上がっていく。時として花鳥風月ばかりが「風景」として持て囃されていく昨今、光と影は写真の表層の描写からさらに深いところに届いていくひとつの「いのち」であることがこれらの写真群からよくわかる。
沈黙の声とは、戦後75年を過ぎた今でも沖縄の「ガマ」の中から私たちに「鬼哭」として発し続けられるものだ。7年にも及ぶ作者の取材は、93年に観光で訪れた「ひめゆりの塔」での痛切な記憶に始まる。戦跡は人間の生きた痕跡として現在も克明に立ち上がっていく。時として花鳥風月ばかりが「風景」として持て囃されていく昨今、光と影は写真の表層の描写からさらに深いところに届いていくひとつの「いのち」であることがこれらの写真群からよくわかる。
「連綿の片(RENMEN NO KAKERA)」 和田 喜博 氏作品
疫病も自然災害も、どこかこれまでの私たち人間の振る舞いが影響しているのではないかと思わせるものがある。連綿と続く世界の日常は確かに美しくもあるが、常に脆弱なものであるかもしれない。作者の眼差しの多くは、近景のものに冷静に静謐に向けられている。束の間の生、そして死。何かを簡単に暗示させ象徴させるものではないが、それらの輪廻をとらえようとする意識こそが表現を呼び、写真を作品としてしっかり自立させた。
疫病も自然災害も、どこかこれまでの私たち人間の振る舞いが影響しているのではないかと思わせるものがある。連綿と続く世界の日常は確かに美しくもあるが、常に脆弱なものであるかもしれない。作者の眼差しの多くは、近景のものに冷静に静謐に向けられている。束の間の生、そして死。何かを簡単に暗示させ象徴させるものではないが、それらの輪廻をとらえようとする意識こそが表現を呼び、写真を作品としてしっかり自立させた。
「寄り添って」 荒井 俊明 氏作品
作者がこれまでの「コンテスト入賞」目的の写真とは一線を画する作業を続けることになったのは、ひとえに被写体の存在そのものがあった。風土に寄り添い、ご夫婦が互いに寄り添う。そんな自然で穏やかな関係を見つめ、写真家はどんどん心が浄化されていく。その過程はそのまま私たちの父母や祖先の記憶へとつながる。懐かしさを超えた情感のほとばしりは、悲しいはずの葬儀までも率直な記録として場に臨ませた。誠実に、丹念に編まれた庶民史でもある。
作者がこれまでの「コンテスト入賞」目的の写真とは一線を画する作業を続けることになったのは、ひとえに被写体の存在そのものがあった。風土に寄り添い、ご夫婦が互いに寄り添う。そんな自然で穏やかな関係を見つめ、写真家はどんどん心が浄化されていく。その過程はそのまま私たちの父母や祖先の記憶へとつながる。懐かしさを超えた情感のほとばしりは、悲しいはずの葬儀までも率直な記録として場に臨ませた。誠実に、丹念に編まれた庶民史でもある。
5.応募状況
年度 | 回 | 応募者数(男・女・不明) | テーマ数(モノクロ・カラー・混合) | 作品枚数 | 都道府県 |
---|---|---|---|---|---|
R2 | 26 | 138(106・29・3) | 145(54・90・1) | 3,861 | 37 |
R1 | 25 | 137(104・33) | 143(61・77・5) | 3,885 | 35 |
H29 | 24 | 131(100・31) | 146(80・60・6) | 3,923 | 36 |
H28 | 23 | 131(111・20) | 143(56・75・12) | 3,879 | 36 |
H27 | 22 | 135(110・25) | 143(52・83・8) | 3,892 | 35 |
H26 | 21 | 117(98・19) | 130(64・62・4) | 3,446 | 33 |
H25 | 20 | 128(105・23) | 140(50・78・12) | 3,632 | 41 |
H24 | 19 | 147(121・26) | 155(63・79・13) | 3,981 | 36 |
H23 | 18 | 156(141・15) | 161(53・102・4) | 4,179 | 41 |
H22 | 17 | 144(127・17) | 151(68・79・4) | 3,867 | 37 |
H21 | 16 | 136(107・29) | 154(53・93・8) | 2,979 | 35 |
H20 | 15 | 127(112・15) | 134(43・89・2) | 2,902 | 36 |
H19 | 14 | 147(121・26) | 155(56・94・5) | 3,442 | 40 |
H18 | 13 | 101(81・20) | 116(57・53・6) | 2,861 | 30 |
H17 | 12 | 111(87・24) | 117(66・48・3) | 2,999 | 32 |
H16 | 11 | 124(95・29) | 124(51・69・4) | 2,848 | 36 |
H15 | 10 | 110(92・18) | 120(56・61・3) | 2,849 | 29 |
H14 | 9 | 103(84・19) | 109(49・54・6) | 2,808 | 30 |
H13 | 8 | 136(114・22) | 142(68・68・6) | 3,311 | 35 |
H12 | 7 | 115(97・18) | 124(75・47・2) | 3,006 | 38 |
H11 | 6 | 119(96・23) | 127(67・58・2) | 2,739 | 34 |
H10 | 5 | 139(108・31) | 150(74・71・5) | 3,134 | 36 |
H09 | 4 | 138(110・28) | 151(82・67・2) | 3,144 | 37 |
H08 | 3 | 151(124・27) | 170(80・86・4) | 2,835 | 34 |
H07 | 2 | 104( 93・11) | 114(50・59・5) | 1,938 | 34 |
H06 | 1 | 108(103・ 5) | 130(62・66・2) | 2,453 | 37 |
お問い合わせ・お申し込み先
〒998-0055 山形県酒田市飯森山2−13(飯森山公園内)
公益財団法人 土門拳記念館 文化賞事務局
電話/FAX:0234-31-0028
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