第23回の結果報告

「酒田市土門拳文化賞」は、本市出身の世界的な写真家・土門拳の文化芸術への功績を記念し、写真文化、写真芸術の振興を目的に平成6年6月に創設した賞です。
23回目を迎えた今回は、全国36都道府県の131人から143テーマの作品が寄せられました。
平成29年1月16日(月)、東京において土門拳文化賞の選考委員会を開催し、次のとおり受賞者が決定したので、お知らせいたします。

1.審査員

江成常夫 (神奈川県相模原市)写真家・九州産業大学名誉教授
大西みつぐ(東京都江戸川区) 写真家・大阪芸術大学客員教授
藤森 武 (東京都練馬区)  写真家・公益財団法人 土門拳記念館学芸担当理事

2.選考結果

酒田市土門拳文化賞(1点)

ストラーン久美子氏(神奈川県横須賀市)
「横須賀ブルー ペルリ164年目の再上陸を想起する(カラー30枚組)

酒田市土門拳文化賞奨励賞(3点|受付番号順)

高田啓一氏(鳥取県鳥取市)
「現在(いま)を生きる」(モノクロ30枚組)
上出優之利氏(東京都新宿区)
「モノクロのブルース」(モノクロ30枚組)
岡田治氏(和歌山県田辺市)
「お良(りょう)さん」(カラー30枚組)

高田啓一氏の作品より

上出優之利氏の作品より

岡田治氏の作品より

3.今後のスケジュール

授賞式 平成29年3月5日(日)午前10時〜 会場:土門拳記念館
受賞作品展 平成29年3月4日(土)〜4月16日(日)土門拳記念館
平成29年6月6日(火)〜6月19日(月)新宿ニコンサロン(東京都新宿区)

4.選考委員講評

◎ 総評 江成 常夫

アメリカ・トランプ大統領の出現は、世界を震撼させ、国内では原発事故による放射能汚染が明日を暗くしている。このように写真は時代や社会の混沌を鏡のように写し出し、未来に向けての、“語り部”の役割を果たしている。
土門拳文化賞は土門拳が確立した、「リアリズム写真」の精神にのっとり、言わば写真本来の力である記録性を基に、新たな地平を切り開くことを目的としている。
今年23回を迎え、賞の方向性と、かたちが整い、それを踏まえた国内はじめ、アジア、欧米にモチーフを求めた多彩な作品が寄せられた。その全体を大雑把に分けると、祭事を捉えた作が目を引き、アジアを主にした海外の作も思いのほか多かった。祭りも異文化も視覚的に豊かだからだろうか。
そうしたなか、トランプ米大統領の言動が波紋を広げている時、70年余りにわたってなお、アメリカの金縛りになったままの基地問題を、鋭く突いたストラーン・久美子さんの作は、時節と相まって秀逸だった。

○ 土門拳文化賞受賞作品について 藤森 武

「横須賀ブルー ペルリ164年目の再上陸を想起する」 ストラーン 久美子作品
「1853年(嘉永6年)アメリカ使節ペリー艦隊を率いて浦賀水道に来る。翌年ペリー久里浜に再び来る。日米和親条約を締結する。」と歴史教科書には記してある。
ストラーン久美子さんの「横須賀ブルー」はこの大テーマの今を横須賀周辺で映像化した。
久美子さんは高校生の時に渡米し20年間アメリカにいたという。帰国後、座間基地で13年、今は横須賀の基地で10年働き、実感した日米のカルチャーの違いを米兵や日本人に教えている。
自宅の窓から沖を行く黒船が見える。基地内の撮影は許容範囲の中で写せるという利点を生かしている。
写真歴は4年足らず。何処にも応募せず、満を持して、今回土門拳文化賞に応募した。はっきりとしたポリシーを持って写した写真は強い。お世辞にもいい写真がたくさんあるとはいいがたい。それ以上に、写真の実在性やリアリティがある。

○ 土門拳文化賞奨励賞受賞作品について 大西みつぐ

「現在(いま)を生きる」 高田 啓一作品
写真は「時間」を伝え、語り、万人に思索を深めるメディアである。作者は写真家であるとともに(退職したとはいえ)どこまでも「教師」であり、聾学校の教え子たちの前向きに歩む姿を優しく見つめている。鳥取県内だけでなく、移り住んだ地も訪ね、素朴な撮影ながらそこで生きている証をしっかり刻印した。人と風景が静かに寄り添った写真はこれほどまでに美しいのかと思わせる労作である。

「モノクロのブルース」 上出 優之利作品
作者は音楽畑の方であり、写真のキャリアは決して長いわけではない。しかし、ある種の勘どころ、いわばリズミカルな身体の動きに任せスナップショットとして「いま」を鷲掴みにしている。東京の繁華街を中心に連なる荒々しくエキセントリックな光景は、社会風俗の記録に留まらず、この時代、この国がどこに行こうとしているのかという本質的な問題を私たちに投げかける。こうしたエネルギッシュな仕事もまた写真ならではの表現だ。
「お良(りょう)さん」 岡田 治作品
なんとたおやかな写真群だろうか。写真プリントとして美しいということもあるが、ここに写っている「お良さん」の笑顔は、大正、昭和、平成という時代を貫く、人の誠実な暮らしぶりが滲み出ているところの見事な美しさだ。野良仕事、こんにゃく作りなど、懐かしい風景に写真を見るすべての人が目を細めるだろう。何度も通い、身内同然に接し「人間」をとらえてきた作者の努力が光る。写真も暮らしもこうした淡々とした積み重ねから成り立つもの。

5.応募状況

年度 応募者数(男・女) テーマ数(モノクロ・カラー・混合) 作品枚数 都道府県
H28 23 131(111・20) 143(56・75・12) 3,879 36
H27 22 135(110・25) 143(52・83・8) 3,892 35
H26 21 117(98・19) 130(64・62・4) 3,446 33
H25 20 128(105・23) 140(50・78・12) 3,632 41
H24 19 147(121・26) 155(63・79・13) 3,981 36
H23 18 156(141・15) 161(53・102・4) 4,179 41
H22 17 144(127・17) 151(68・79・4) 3,867 37
H21 16 136(107・29) 154(53・93・8) 2,979 35
H20 15 127(112・15) 134(43・89・2) 2,902 36
H19 14 147(121・26) 155(56・94・5) 3,442 40
H18 13 101(81・20) 116(57・53・6) 2,861 30
H17 12 111(87・24) 117(66・48・3) 2,999 32
H16 11 124(95・29) 124(51・69・4) 2,848 36
H15 10 110(92・18) 120(56・61・3) 2,849 29
H14 9 103(84・19) 109(49・54・6) 2,808 30
H13 8 136(114・22) 142(68・68・6) 3,311 35
H12 7 115(97・18) 124(75・47・2) 3,006 38
H11 6 119(96・23) 127(67・58・2) 2,739 34
H10 5 139(108・31) 150(74・71・5) 3,134 36
H09 4 138(110・28) 151(82・67・2) 3,144 37
H08 3 151(124・27) 170(80・86・4) 2,835 34
H07 2 104( 93・11) 114(50・59・5) 1,938 34
H06 1 108(103・ 5) 130(62・66・2) 2,453 37

お問い合わせ先

〒998-0055 山形県酒田市飯森山2−13(飯森山公園内)
公益財団法人 土門拳記念館  文化賞事務局
電話/FAX:0234-31-0028

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